サイクルメニューを回し始めると必ず直面するのが、**「季節感のなさ」と「行事食との兼ね合い」**です。 「せっかく作ったサイクルに、どうやって行事食を組み込めばいいの?」と悩む方も多いですが、実はここに最大の落とし穴があります。今回は、長年サイクルメニューを運用して辿り着いた「最も効率的で質の高い運用ルール」を公開します。
1. 鉄則:行事食はサイクルに「混ぜない」
まず、最も大切なルールからお伝えします。行事食はサイクルメニューの「外」で作りましょう。 なぜなら、サイクルメニューは「曜日」で回りますが、行事食(お正月、節分、七夕など)は「日付」で決まっているからです。
もし「第1週の月曜日」に行事食を組み込んでしまうと、翌年には日付がずれるため、カレンダー通りの行事日に食事が提供できなくなります。その都度、前後の献立を入れ替える「大手術」が必要になり、サイクルメニューのメリットである効率化が台無しになります。
【解決策:差し替え運用】 行事食の日は、その日のサイクルメニューを丸ごと**「行事食献立」と差し替える**だけ。これならサイクル自体をいじる必要がなく、事務作業が劇的に楽になります。
2. 「旬の料理」を一生モノの資産に変える方法
基本のサイクルメニューには、特定の季節にしか出せない料理(例:冷やし中華、煮込みうどん、スイカ、菜の花)はあえて入れすぎないのがコツです。 その代わり、**「旬の差し替えストック」**を作ります。
- 基本は固定: 1年を通して使える「無難な1軍メニュー」でサイクルを構成します。
- 複写後に差し替え: 献立ソフトで翌月分を複写(コピー)した後、1品だけ旬の料理に差し替えます。
- データを保存: 「春用サイクル」「夏用サイクル」として保存しておきます。
これを1年分繰り返すとどうなるでしょうか? 来年の春には、去年調整した「春の差し替え済み献立」がそのまま使えます。「去年は何を出したっけ?」「スイカを出し忘れた!」というミスがゼロになり、年を追うごとに洗練された**「最強の年間メニュー」**が完成するのです。
3. 「飽き」を防ぐ!残食調査のフィードバック術
サイクルメニューの利点は、「改善のサイクル」が速いことです。
- 失敗しても次がある: 「今回の魚の味付け、不評だったな」と思ったら、次のターン(4週間後)に向けてすぐにレシピを修正できます。
- PDCAが回しやすい: 毎日献立を変えていると、一回きりの失敗で終わりがちですが、サイクルなら「次はこうしよう」という対策が具体的に立てられます。
残食調査の結果を、すぐに次回のサイクルに反映させる。このスピード感こそが、おいしい給食を作るための秘訣です。
4. 職員教育と検食の精度アップ
同じ料理が定期的に来ることは、調理現場の教育や、さらなる業務展開にも繋がります。
- 「いつもの味」の定着: 調理スタッフが手順に慣れるため、盛り付けの美しさや味の安定感が格段に上がります。切り込みから盛り付け、チェックポイントに至るまで、マニュアル作成が容易になるのも大きなメリットです。
- 検食の質が変わる: 検食を行う管理栄養士も、「いつもの味」を知っているからこそ、わずかな異変(塩味が強い、火の通りが甘いなど)に即座に気づけるようになります。
- 膨大な「病態食展開」への習熟: 献立作成は常食だけではありません。その先には多いところで100種類以上の病態食展開が待ち構えています。サイクルメニューにすることで、管理栄養士も展開内容に徐々に慣れ、配膳ミスなどの間違いにもいち早く気づけるようになります。
さいごに
サイクルメニューは「一度作って終わり」ではなく、**「回しながら育てていくもの」**です。 行事食や旬を「別枠」で管理することで、あなたの献立作成は、毎年ゼロから作り直す「苦行」から、より良いものに磨き上げる「クリエイティブな仕事」へと変わります。
次回(連載最終回)は、いよいよ仕上げ。**給食システムへの入力と、最後の難関「食品構成の帳尻合わせ」**について解説します!



