前回(ステップ2)で最強の「料理リスト」が準備できたら、次はいよいよ**4週間の「箱(パターン)」**を埋めていくパズル作業に入ります。 このステップこそが、サイクルメニュー作成において最も頭を使い、かつ失敗しやすい難所です。単に28日分を埋めるだけでは不十分。サイクルが「回る」ことを意識した、プロの組み立て方を解説します。
1. まずは「献立の箱(パターン)」を固定する
いきなり料理名を入れ始めるのは挫折の元です。まずは、各分類の必要個数を確定させるための「箱」を決めます。
【例:4週サイクルの基本パターン】
- 朝: ごはん、味噌汁(週2回パン+スープ)、温小鉢、冷小鉢、牛乳
- 昼: ごはん、大皿(主菜)、汁物、冷小鉢、デザート
- 夕: ごはん、大皿(主菜)、温小鉢、冷小鉢
このように固定すると、1サイクル(28日分)で必要な個数が明確になります。(例:大皿は計56個、味噌汁は朝20回、朝スープ8回など)
さらに、その詳細のバランスを決めます。
- 肉料理(計24個): 焼き6、煮6、炒め6、揚げ4、蒸し2
- 魚料理(計24個): 焼き8、煮8、揚げ4、蒸し4
- 卵・大豆製品: 週1回 × 4週 = 4個
- 温小鉢(計56回): 焼き8、煮20、炒め16、揚げ8、蒸し4
- 冷小鉢(計84回): 和え物28、サラダ28、酢の物12、マヨサラダ8、その他8
- 汁物(計28回): 味噌ベース8(朝スープの日)、すまし8、スープ8
2. 箱に「分類名」だけをバランスよく配置する
各分類の必要個数が決まったら、いきなり料理名を入れず、まずはエクセル上の箱に「分類名(属性)」だけを配置していきます。
献立パズル:分類配置のイメージ(横スクロール・2枚並べ対応)
| 提供区分 | 1日目(月) | 2日目(火) | 3日目(水) | 4日目(木) | … |
| 朝食 | ・味噌汁 ・煮物小鉢 ・和え物 | ・スープ ・炒め物 ・和え物 | ・味噌汁 ・焼き物 ・浸し | ・スープ ・蒸し物 ・サラダ | … |
| 昼食 | ・魚:煮物 ・すまし ・酢の物 | ・肉:炒め物 ・スープ ・和え物 | ・魚:揚げ物 ・味噌汁 ・和え物 | ・肉:焼き物 ・すまし ・マヨ和え | … |
| 夕食 | ・肉:揚げ物 ・蒸し物 ・サラダ | ・魚:焼き物 ・煮物 ・浸し | ・肉:煮物 ・炒め物 ・サラダ | ・魚:蒸し物 ・煮物 ・和え物 | … |
このように28日分すべてを「分類名」で埋めます。この形式で作成しておけば、4週目の右隣に1週目を並べたとき、「夕食の行」や「朝食の行」を横にスライドして見るだけで、つなぎ目の重複チェックが劇的に楽になります。

「属性」だけの段階で、大まかな不具合を必ずつぶすようにしてください。ここをおろそかにして料理名を入れてしまうと、後で修正が必要になったときに大惨事が起こります。
3. 料理を選抜し「1枚目」を完成させる
属性の配置が終わったら、前回の「料理リスト」からメニューを当てはめていきます。
- 「1軍献立」から選ぶ: サイクルメニューは繰り返すものです。なるべく嗜好調査で人気の高かった「無難でおいしいメニュー」を優先して配置します。
- 季節感・行事食は「空けておく」: 冷し中華や銀だらみりん等、季節感が強すぎる料理はまだ入れないこと。これらは後から「差し替える」のが運用を楽にするコツです。
- 他地域の郷土料理は残しておく: イベント料理に活用できるため、通常サイクルには入れずにストックしておきます。
4. 【重要】最大の難関「つなぎ目」のチェック
ここからが本番です。28日分の献立が埋まって「よし、完成!」と叫びたくなりますが、ここで踏みとどまってください。サイクルメニューは**「4週目の翌日に、また1週目の月曜日が来る」**という連続体です。
プロの執念:エクセルを2枚並べる
エクセルで作成した献立表を横に2枚コピーして、「第4週」の隣に「第1週」が来るように並べてみてください。
- 「同じ料理」が続いていないか? 第4週の日曜日の夕食が「焼き魚」で、第1週の月曜日の朝食が「焼き魚」になっていないか?
- 「味付け」が被っていないか? 日曜日の夕食が「魚の味噌煮」で、月曜日の昼食が「魚の味噌漬け焼き」になっていないか?
- 「食材」が連続していないか? 日曜日の夕食が長いも、月曜日の朝も長いもと連続していないか?

単体で見ると完璧な28日間でも、この**「つなぎ目」**で同じ料理が続くと、患者さんは「またこれか」と敏感に察知します。納得いくまで、1週目と4週目を入れ替えながら調整を繰り返します。
5. 調理現場の「動線」を想像する
パズルを解く際、忘れてはいけないのが厨房スタッフの動きです。
- 調理器具の重複: 回転釜が2つしかないのに、主菜と副菜の両方で回転釜を使う献立になっていないか。
- 作業工程の集中: すべての料理が「包丁での切りもの」が多いものばかりだと、仕込みがパンクします。
- 揚げ物の頻度: フライヤーのキャパシティと、その後の清掃時間を考慮した配置になっているか。
調理負荷が分散されているかを確認しながら、料理を微調整していきます。
さいごに
サイクルメニューのパズルは、一度で正解が出ることはありません。 「入れては消し、消しては入れる」の繰り返しです。しかし、このステップで徹底的に「つなぎ目」と「調理負荷」を練り上げることで、運用開始後のクレームやトラブルはゼロに近づきます。
次回(連載第4回)は、運用を劇的に楽にする**「行事食の差し替えルール」と「旬の資産化」**についてお伝えします!



