みなさんこんにちは。
献立作成は栄養士の基本技術の1つですが、病院や施設においてはサイクルメニューが主流で、1から作ることも減ってきました。
学校ではしっかりと習っていても、実務で使わないと忘れていくものです。
本記事では常食献立の立て方について、基本的な流れを説明したいと思います。
細かい内容については各項目毎にリンクを貼っていますので、そちらでご確認頂けます。
献立作成者によって、考え方や作り方は異なりますが、一つの参考としてご覧いただければと思います。
ではいきましょう。
常食献立の作成手順
本ブログ管理者の考える献立作成の手順は、下記の7段階です。
- 給与栄養量の算出
- 食品群別荷重平均成分表の作成
- 食品構成の作成
- 献立の大枠の検討
- 食品構成を用いて献立を立てる
- 調味料を検討
- 最終確認
一つずつ説明していきます。
給与栄養量の算出
とにもかくにも給与栄養量を策定しないと献立作成はできません。
給与栄養量の策定手順は下記のとおりです。
エネルギー・タンパク質の目標量と常食を何段階にするか検討する
普通食(常食)患者年齢構成表及び荷重平均栄養所要量表を作成し、エネルギー及びタンパク質の目標量を決定します。
また、喫食者の年齢構成、性別から目標エネルギー量の分布をとり、幅があったり、いくつかの集団に分かれている場合には、2段階以上の常食を準備した方がよいでしょう。
脂質の目標量を算出する
日本人の食事摂取基準2020によると、脂質の目標量は全年齢層で20~30%Eとなっています。
炭水化物の目標量を算出する
目標エネルギー量からタンパク質と脂質のエネルギーを引いた分が炭水化物のエネルギーとなります。
ビタミン・ミネラル・食物繊維の基準を設定
日本人の食事摂取基準2020を参考に設定します。
運用方法の検討
目標栄養量を一覧としてまとめて完成です。
あとは、どの対象者にどの常食を用いるか第一選択を決めておくとよいでしょう。ただし、個々に栄養アセスメントを行い、適宜食事内容の変更・調整は必要です。
給与栄養量算出についての詳細については下記をご確認ください。
食品群別荷重平均成分表の作成
次に食品群別荷重平均成分表を作成します。作成手順は以下のとおりです。
- ある期間の食品ごとの使用実績を集計する
- 食品ごとに分類する
- 食品群ごとに各食品の使用比率を算出し、%をg換算し、各栄養素量を算出し、合計する
- 一覧としてまとめる(食品群別荷重平均成分表の完成)
ある期間の食品ごとの使用実績を集計する
1年間を目安に集計するとよいでしょう。
1か月や3か月では季節による偏りが生じます。
食品群ごとに分類する
適切に分類をすると、各食品群中の食品は性質の似ているものが集まるはずです。
しかし、乾燥と生が混在する場合には、取り扱いに注意が必要です。
食品群ごとに各食品の使用比率を算出し、%をg換算し、各栄養素量を算出し、合計する
一覧としてまとめる(食品群別荷重平均成分表の完成)
下記のように、各食品群ごと算出した栄養量を一覧にまとめたら完成です。
食品群別荷重平均成分表の作成の詳細については下記をご確認ください。
食品構成の作成
そして、対象者に適した献立を作成する上で最も重要なのが食品構成の作成です。
食品群別荷重平均成分表を用いて食品構成を作成する
下記のように食品構成を検討します。
食品構成の作成(食品群別荷重平均成分表ver.)の詳細は下記をご覧ください。
糖尿病治療のための食品交換表を用いて食品構成の作成する
糖尿病治療のための食品交換表でも食品構成を作成することができます。
食品構成の作成(糖尿病治療のための食品交換表ver.)の詳細は下記をご覧ください。
献立の大枠(組み合わせ)の検討
献立の大枠とは、朝食であれば「主食+味噌汁+温小鉢+冷小鉢+飲み物」、昼夕食であれば「主食+大皿+汁物または温小鉢+冷小鉢」など、献立作成に関わるルールのことです。
他にも下記の内容について検討する必要があります。
品数と配置
毎日品数が異なると厨房業務が混乱します。ある程度統一した方がよいでしょう。
固定できる料理は固定する
特にご飯などは、毎食gが異なると混乱します。統一した方がよいでしょう。
料理ごとの目安量
使用している器や全体のバランスを想像しながら、目安量をある程度統一しておいた方がよいでしょう。
似たような料理で、ある日は器の6分目、ある日は器いっぱいいっぱいなど、盛る量に差があると、盛り残りの原因となり得ます。
少なくとも似たような料理の場合には、ある程度量を揃えましょう。
この項の詳細については下記をご確認ください。
食品構成を用いて献立を立てる
食品構成をすべて使い切るイメージで、検討した献立の大枠に、料理を当てはめていきます。
まず大皿から検討し、それ以外の料理を検討します。
使わなかった食材が出てくると思いますが、その食材は付け合わせや汁物などの材料として使うとよいでしょう。
食品構成をすべて使い切るイメージと言いましたが、毎食グラムにまでこだわると料理として体をなさないものが出てきます。1か月を目途に平均して食品構成通りに使用できるとよいですね。
この項の詳細は下記をご覧ください。
調味料の検討
ここまでくると献立の全貌が見えてきました。あとは味付けを検討するだけです。
ポイントは下記の2つになります。
塩分濃度を考える
塩分濃度を考える前に重要なことが2点あります。
それは、常食を作る場合にはまだ減塩できるという余力を残しておくこと、何でご飯を食べていただくかイメージすることです。
減塩できるという余力を残しておく
常食の塩分目標量は6.5~7.5gの場合が多いと思いますが、この時点で一般的な塩分使用量よりも十分塩分が少ないです。だからと言って、メイン料理に減塩醤油を使ったり、汁物は提供しないなど減塩食で用いられるような手法を用いると、いざ減塩食に展開するときに苦労します。なので、まだ減塩できる余力を残しておくべきです。
何でご飯を食べていただくかイメージする
ご飯を食べてもらうためには、ある程度の味の濃さが必要です。
大皿でご飯を食べてもらおうと思うのであれば、大皿の塩分濃度は一定以上必要です。皆さんが作った献立の塩分量とイメージは合致していますか?
- 朝食 :味噌汁1g程度、温小鉢0.5g程度、冷小鉢0.5g未満
- 昼食・夕食:大皿1~1.5g、温小鉢0.5g程度、冷小鉢0.5g未満
味付けの黄金比を知る
調味料を考える際には、黄金比を知っていると役に立ちます。
下記に一覧を載せていますので、参考にされてください。実際には食材量や作り方、調味料により大きく変わりますので、調整いただければと思います。
最終確認
これで献立が99%できました。あとは各栄養量が目標を満たしているか確認していきます。
ポイントは2つ、”日毎の評価”と”1か月毎の評価”です。
日毎の評価
栄養量を確認すると当然のことながら、目標値に対して過不足が生じます。エネルギー産生栄養素やエネルギーについては±5%以内、塩分は目標量以下、その他のビタミンやミネラルについては推定平均必要量(推奨量なら尚よい)を超えていれば理想的です。(各施設で基準が異なると思いますので確認してください)
しかしながら、毎日この範囲に抑えるのは容易ではありませんし、食品成分表の成分値自体に誤差がありますので、数値にばかり執着するのではなく、食品構成から見えるバランスを重視してもいいかもしれません。
料理はおいしくないと食べてくれません。具合が悪い患者さんではなおさらです。数値合わせの献立にならないように注意しましょう。
1ヶ月毎の評価
食品構成を用いて献立を立てた場合、1か月程度の期間でみれば、おおよそ目標の栄養量に近づくと考えられます。エネルギー産生栄養素やエネルギーについては±5%以内、塩分は目標量以下、その他のビタミンやミネラルについては推定平均必要量(推奨量なら尚よい)を超えていれば理想的です。
過不足があれば、食品群別荷重平均成分表を確認して、どの食品を全体的に増やすべきか減らすべきかを検討して次につなげましょう。適宜食品構成の見直しも検討してください。
さいごに
いかがでしたでしょうか。
複数日数の献立を考える場合には、栄養量主導では献立作成が進みません。食品構成を意識することが簡単に献立作成を進めるコツです。
病院食や施設の食事は栄養補給という側面はあれど、最も大切なことは”食事の時間が楽しみになること”だと考えています。大変に難しいことではありますが、一人でも多くの方が、治療に前向きになったり、毎日明るく生活いただける手助けになれたらと思います。
本記事は当ブログ管理者の私見に基づく内容であり、いかなる場合にも責任は取りかねますのでご了承ください。