病院や施設の新規立ち上げや提供される給食の給与栄養量を再検討する場合、常食の給与栄養量を検討する必要がありますが、一度決めてしまうと変更するのがとても大変です。
そして、地域によっては保健所の監査でも確認をされることもありますので、ある程度根拠を持って基準を策定する必要があります。
今回は、給与栄養量の決め方について、一例をご紹介したいと思います。
あくまで当ブログ管理者の私見によるものですので、一つの参考として見ていただければ幸いです。
では行きましょう。
給与栄養量策定手順
手順は下記のとおりです。一つずつ確認していきましょう。
- エネルギー・タンパク質の目標量と常食を何段階にするか検討する
- 脂質の目標量を算出する
- 炭水化物の目標量を算出する
- ビタミン、ミネラル、食物繊維などの基準を設定する
- 運用方法を検討する
①エネルギー・タンパク質の目標量と常食を何段階にするか検討する
まず決めるべきことは下記の2点です。
- エネルギー・タンパク質の目標量を設定
- 常食をいくつの段階に分けるか検討
上記の検討には「普通食(常食)患者年齢構成表及び荷重平均栄養所要量表」を用います。
普通食(常食)患者年齢構成表及び荷重平均栄養所要量表を作成する
下記のようなフォームを利用して、入所中・入院中の喫食者数を入力してみましょう。
- 各月15日現在の普通食(常食)喫食者数を、性別・年齢別に入力
- 喫食者数と1人1日あたり給与栄養所要量をかける
- 全年齢の一人当たりの平均給与栄養所要量を算出
これから算出された栄養量が、給与栄養量の参考となります。
実際には数字を100kcal単位や5g単位でまるめたり、入所者・入院患者の活動量などを鑑みて、増減させます。
また、この方法で算出されるたんぱく質の総エネルギー量に対する%は、18歳以上で11.3~14.3%となります。筋肉量増量を目指すことが多いような回復期リハビリテーション病棟などでは少し少ない印象を受けるかもしれません。適宜、P:F:C=10~20:20~30:50~70や1.2g/kgBWなど、対象者の実情に応じた調整が必要です。
常食を何段階にするか検討する
次に常食を何段階にするか検討します。
喫食者の年齢構成、体格には幅があり、また性別も単独ではありません。特に年齢構成幅が広い場合には、一段階のみでは対応できない場合が多いです。
下記のように各個人の目標栄養量の分布をとってみて、何段階に分けるか、給与栄養目標量をどうするか検討しましょう。
例1)のように、集団の目標栄養量の幅が広く、いくつかの集団に分かれている場合には、常食A,常食Bのように2つ以上の常食を作った方がよい場合があります。
例2)のように、集団の目標栄養量の幅が狭い場合には、常食を複数に分けなくても、主食量変更のみでカバーできるかもしれません。
いずれの場合にも、各施設の考え方がありますので、皆さんで議論して決める必要があります。
②脂質の目標量を算出する
ここからは、1800kcal、タンパク質65gと仮定して、その他の栄養量を決めていきたいと思います。
日本人の食事摂取基準2020によると、脂質の目標量は全年齢層で20~30%となっていますので、仮に25%として計算してみると、50gとなりました。
脂質目標量(g)=1800kcal×25%÷9kcal/g=50g
③炭水化物の目標量を算出する
次に炭水化物量を求めます。もうすでにエネルギー産生栄養素のうち、タンパク質と脂質の目標量が決まっていますので、下記のように求めると、270gとなりました。
炭水化物目標量(g)=(1800kcal-タンパク質65g×4kcal/g-脂質50g×9kcal/g)÷4kcal/g=270g
④ビタミン、ミネラル、食物繊維の基準を設定
ビタミン、ミネラル、食物繊維については、日本人の食事摂取基準2020を参考に、各施設の対象者の分布を確認の上、必要量を満たすことのできる目標量を検討しましょう。
⑤運用方法を検討する
今まで算出、検討した全ての目標栄養量を表にまとめて完成です。
適宜、男性は常食A、女性・高齢者は常食Bなど施設内で使い方を統一しておくと、入院時から適切に近い栄養量で提供することができると思います。当然、活動量や体格により異なりますので、栄養アセスメント後の食事内容の変更・調整は必要です。
最後に
各施設の給与栄養量の求め方はそれぞれ異なると思います。
一人で悩まず、関わる全ての方に相談しながら、納得のいく、根拠のある給与栄養量を作成しましょう。
最後までご覧頂きありがとうございました。本ブログが少しでも皆様のお役立てれば幸いです。
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