献立作成時に一番悩むのが、調味料の量ですよね。
料理を決めたはいいものの、いざ計算すると塩分がオーバー。料理本やネットのレシピを参考にしようにも、塩分が多すぎてそのままでは使えない……。
「じゃあ、この料理は諦めるしかないの?」と悩む前に、本記事を参考にしてみてください。大量調理ならではの、**少ない塩分で満足度を最大化する「味付けのロジック」**をご紹介します。
1. 病院・施設の食事が「薄い」と言われる正体
病院や施設の食事は「おいしくない」「味が薄い」というイメージを持たれがちです。その原因は、やはり圧倒的な目標塩分量の少なさにあります。
日本人の平均塩分摂取量は1日10gを超えていますが、『日本人の食事摂取基準2020』による目標量は、男性7.5g未満、女性6.5g未満。これは、治療食(塩分制限食)の6.0g未満と大差ありません。この「非常に大きな壁」があるからこそ、私たちは工夫を凝らす必要があるのです。
また、現場での重要な視点は、**「常食の時点で、塩分制限食のためにさらなる減塩ができる『余力』を残しておく」**ということです。常食で減塩策を使い切ってしまうと、展開食が作れなくなります。このバランスを保つためにも、戦略的な味付けが不可欠です。
2. 「何でご飯を食べていただくか」をイメージする
大量調理における常食の味付けは、基本的な調味料バランスは一般的でよいと思います。大切なのは、塩分をただ削るのではなく、一食の中での「味の濃淡(メリハリ)」をつくることです。
そこで最も重要になるのが、**「何でご飯を食べていただくか」**というイメージです。
- 朝食: 「お味噌汁」と「温小鉢」でご飯を食べてほしい。その分、冷小鉢はあっさりと。
- 昼・夕食: メインの「大皿」でご飯をしっかり食べてほしい。その分、付け合わせや副菜は薄味に。
具体的な塩分の配分例
学生さんの実習などでよくあるのが、メインの大皿で満足させたいはずなのに、大皿の味が一番薄くなってしまう失敗です。配分に正解はありませんが、私は以下のようなイメージで割り振っています。
- 朝食: 味噌汁1.0g程度、温小鉢0.5g程度、冷小鉢0.5g未満
- 昼・夕食: 大皿1.0〜1.5g、温小鉢0.5g程度、冷小鉢0.5g未満
3. 「味が薄くて我慢できるもの・できないもの」を見極める
これは私の経験に基づく私見ですが、味の満足度を左右するポイントです。
「野菜は薄味でもいいし、サツマイモは素材の味だけで十分。でも、肉や魚は味が薄いと満足度がガクンと落ちる」
例えば、「魚の煮物 + サツマイモ・インゲン」というメニューなら、付け合わせの野菜にはあえて味をつけず、魚の煮汁を絡めて食べてもらうようにします。大皿に割り振った貴重な塩分を、主役である「魚」に集約させることで、味にメリハリが生まれます。
味付けをせず「素材の味」で勝負できる付け合わせリスト
- 焼き・蒸しで甘みが引き立つ: サツマイモ、栗カボチャ、インゲン、スナップエンドウ、絹さや、アスパラ、ピーマン、パプリカ、ナス、ズッキーニ、とうもろこし、オクラ
- 生やソテーでアクセントに: トマト、キュウリ、キノコ類(強く乾煎り、またはオリーブオイルでソテー)
- 香りを楽しむ: ホワイトアスパラ(バター・ブロード)
4. 味付けの黄金比と塩分濃度
作り方や実際に使用される調味料によって調整が必要ですが、下記に参考となる黄金比をご紹介いたします。
料理の塩分パーセント(%)の目安
食材重量に対して、以下の%を基準に検討してみましょう。
| 塩分% | 感じ方の目安 | 適した料理 |
| 0.8〜1.0% | ある程度の味付けを感じる | メインの大皿、煮物 |
| 0.8% | だしが効いていれば美味しい | 汁物 |
| 0.6〜0.8% | 薄めの味付け(箸休め) | 和え物 |
| 0.4% | 物足りない(薄すぎる) | 下茹で野菜など |
※大量調理は家庭料理に比べ、鍋肌に残る調味料の割合が少ないため、味が濃く感じられやすい傾向があります。試作の際は、最低でも5人前以上で作るのが現場とのズレを防ぐコツです。
五味(ごみ)のバランス活用
塩味だけに頼らず、以下のバランスをイメージして調整すると、満足度が上がります。
- 酸味: 塩分が少なくても、味の輪郭をはっきりさせる。
- うま味: 物足りなさを補い、砂糖の減量にも繋がる。
最後に:献立作成は栄養士の「特異性」
献立作成は、一朝一夕で身につくスキルではありません。しかし、医療職の中で唯一「献立を理論的に組み立てられる」のは栄養士だけです。
日頃から自分なりに理論を持って、食べてくれる方の意見を取り入れながら続けていけば、いつの間にか自分なりの「黄金比」ができるようになります。本記事が、皆様の献立作成の参考になれば幸いです。
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